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相続

遺産をどのように配分するかは,本来,亡くなられた方ご本人(被相続人)が自分の意思で自由に決めるべきです。

しかし,被相続人が,遺産の配分方法を決めずに亡くなられると,相続人は,遺産の配分ができず,不都合な事態が生じます。

そこで,民法では,こういった場合に備え,相続のルール(法定相続)を定めているのですが,法定相続による形式的な配分では,かえって不平等になることもあります。 そのようなとき,遺言による配分であれば,法定相続人に限らず残された人々の事情に応じて,適切に,被相続人(遺言者)の意思に基づき,遺産を配分することができるのです。 つまり,遺言があれば,遺留分の制限はあるにしても,原則,遺言が法定相続に優先し,遺言に決められた配分に従って,遺産が承継されます。 遺言書については,こちらをご覧ください。

では,相続とはどのようなものでしょうか。

相続放棄

相続が発生した場合,相続人は,相続をするかしないかの選択権を有しており,相続人は次のいずれかの方法を選択できます。

①単純承認

相続が発生すると,被相続人の預貯金や不動産などのプラスの財産だけではなく,借金や滞納金・未払いの公租公課などのマイナスの財産についても相続人が引き継ぐことになります。これらすべての財産を全て引き継ぐ方法を「単純承認といいます。

②相続放棄

単純承認では,遺産とともに,自分が全く知らない借金や滞納金であったとしても,相続人であれば,法律上,自動的に支払い義務を負うことになりますが,相続することを放棄することで,被相続人の権利や義務を一切受け継がない方法が「相続放棄」です。

具体的には,自分は相続に一切関わりたくないという場合や明らかに債務超過(プラスの財産よりもマイナスの財産が多い)の場合は,この手続きを選択します。

相続放棄の手続きは,管轄の家庭裁判所に,その旨の申述をしなければならず,申述は,民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。

また,相続放棄が完了すると,後から撤回することはできないため,もし,相続放棄が受理された後,莫大な財産が見つかったとしても,その財産を引き継ぐことはできません。

③限定承認

被相続人の債務がどの程度あるか不明で,相続財産の内容が,プラスの財産が多いのかマイナスの財産が多いのかが分からないという場合に有効な手段で,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を引き継ぐ方法です。

具体的には,相続財産から,被相続人の債権者に対して負債の弁済及び受贈者に対して遺贈の弁済をした後,弁済後もプラスの財産が残っている場合は,それを相続人が承継することになります。つまり,限定承認は,プラスがあった場合だけ相続をすることができるようになります。

限定承認の例

A
プラスの財産
B
マイナスの財産
最終的な遺産(A-B) 結果
1000万円 1200万円 ▲200万円 相続しない
1000万円 700万円 300万円 300万円を相続する

なお,限定承認は,家庭裁判所に対して,相続人全員が共同して手続きを行う必要がありますので,相続人全員の協力が得られない場合は,手続きを行うことができません。

遺産分割協議

遺言がない場合,遺産は,相続人が複数の場合,全員の共有財産となります。

この,遺産を共有した状態から,各相続人に分配する場合は,相続人全員で協議する必要があります。相続人全員の合意があれば,必ずしも遺言や法定相続分に従う必要はありません。 手続きの流れとしては,

①相続人の確定→②相続財産の調査→③遺産分割協議→④遺産分割協議書を作成
となります。

分割方法
現物分割 「不動産は○○,預金は□□」と遺産をあるがままの形で分割。
換価分割 不動産等の遺産の一部または全部を売却し,金銭で分ける方法
代償分割 遺産の全部または一部を現物で相続人中の1人又は一部の者に取得させ,取得した相続人が,他の相続人に対して不足分を代償金として支払う。

遺産分割調停・審判

遺産分割協議がまとまらない場合や協議をすることができない場合は,家庭裁判所に対して,遺産分割調停の申立てを行います。遺産分割調停の申立ては,相続人のうちの1人又は複数が申立人となり,申立人以外のすべての相続人を相手方とする必要があります。

調停の手続では,調停委員が,当事者双方から事情を聴き,事情をよく把握したうえで,各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向ふまえて解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし,合意を目指し,話合いが進められます。

しかし,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合,自動的に審判手続が開始され,裁判官が,遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して,審判をすることになります。

遺言執行

遺言は,遺言書を書いただけでは,その内容は自動的に実現されません。

遺言書に書かれている内容・趣旨に従って,具体的な各種手続き(不動産の相続登記や預貯金の名義変更等)を行う必要があります。

遺言の内容を実現する行為を「遺言の執行」といい,遺言の内容を実現する人のことを「遺言執行者」といいます。遺言執行者は,①遺言で指定される場合と,②家庭裁判所に選任される場合とがあります。

①遺言で指定

遺言の内容を確実に実現するためには,遺言で遺言執行者を指定しておく方が良いです。遺言で,一人又は数人の遺言執行者を指定するか,その指定を第三者に委託することができます。

②家庭裁判所による選任

遺言によって遺言を執行する人が指定されていないとき又は遺言執行者が亡くなったきは,家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをします。利害関係人(相続人,遺言者の債権者,遺贈を受けた者など)であれば,申立可能です。

遺言書検認

遺言書(公正証書遺言除く)の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく,遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。

また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければなりません。

検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続であり,遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

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